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実績・事例

京都大学|研究面談にコーチングを活かす実践型研修+1on1コーチング

背景・課題

京都大学 総合研究推進本部(KURA)のURAの皆様を対象に、「研究面談にコーチングをどのように活かすか」をテーマとした継続型の研修プログラムを実施しました。

KURAでは、研究者の関心や要望を知る重要なタッチポイントとして、研究者との「研究面談」を重視しています。

研究面談では、研究費や制度などに関する情報を提供するだけでなく、研究者の興味・関心や実現したいことを引き出し、双方向の議論につなげることが求められます。

一方、その進め方について定型化された手法はなく、URA一人ひとりの経験知に委ねられている部分もありました。実際の面談では、目的設定、信頼関係の構築、研究構想の深掘り、論点整理、情報提供や助言を行うタイミングなど、さまざまな難しさがあります。

そこで、研究者の話を聴き、考えを引き出し、本人の気づきや自発的な行動を促す「コーチング」の考え方やスキルを研究面談に取り入れられないかという発想から、本プログラムがスタートしました。

研修と実践を繰り返す継続型プログラム

プログラムは、単発のコーチング研修ではなく、全4回の集合研修と、研修期間中の1on1コーチングを組み合わせた実践型の構成としました。

研修では、コーチングの基本的な考え方から、信頼関係の構築、傾聴、質問、ティーチングとコーチングの使い分け、コーチングの対話モデルなどを体験的に学びました。

さらに、研修と研修の間には、学んだことを実際の研究者との面談などで実践。次の研修では、その経験を振り返り、うまくいったことや難しかったことを参加者同士で共有しました。

学ぶ → 現場で試す → 振り返る → 改善する → 再び実践する

というサイクルを繰り返すことで、一般的なコーチングの手法をそのまま当てはめるのではなく、それぞれのURAが自身の研究支援の現場に合わせて活用することを目指しました。

研修は基礎編・応用編に分けて実施し、後半では、それまでの実践を踏まえながら研究面談モデルのブラッシュアップにも取り組みました。

「コーチングを受ける」経験も学びに

プログラムのもう一つの特徴が、集合研修と並行して実施したプロコーチによる1on1コーチングです。

コーチングは、知識やスキルとして学ぶだけでは、実際の対話の中でどのようなことが起きるのかを十分に理解することが難しい面があります。

そこで、研修参加者のうち10名を対象に、自らがクライアントとして1on1コーチングを体験する機会を設けました。1on1を受けたURAは、その経験や気づきを研修のグループワークで共有し、研究面談にどのように活用できるかを考えました。

実際に「聴いてもらう」「問われる」「考える」「自分自身で気づく」という経験をすることで、支援する側がすぐに答えや解決策を提示するだけでなく、相手自身が考え、言葉にする時間をつくることの意味を体験的に理解する機会となりました。

URA自身の経験知から「KURA研究面談モデル」を作成

本プログラムの大きな特徴の一つが、研修を通じて**「研究面談コーチングKURAモデル」**を作成したことです。

KURAには、研究者との面談を数多く経験してきたURAがいます。その一人ひとりが、研究者との信頼関係の築き方、研究構想を聞く際の工夫、情報提供のタイミングなど、さまざまなノウハウを蓄積しています。

そこで、コーチングという新しいスキルを学ぶだけでなく、URA自身がこれまでの研究支援で培ってきた「暗黙知」を持ち寄り、言語化・共有することも研修の目的としました。

新任研究者訪問や研究構想相談など、KURAで実際に行われている研究面談を題材に、コーチングの対話モデルも参考にしながら、

「KURAの研究面談では、どのような準備をし、どのように対話し、どのようにフォローするのか」

を参加URA自身が検討しました。

その成果を、「面談前」「面談のはじめ」「面談中」「面談の終わり」「面談後」という実際の研究支援の流れに沿って整理。

それぞれの場面について、**「URAとして実施すること」と「コーチングの視点で加えられること」**を明確にし、KURA独自の研究面談モデルへとまとめていきました。

たとえば、面談前には研究者の経歴や研究内容、研究費獲得歴などを調べ、面談のゴールを意識して準備する。面談のはじめには、目的や進め方、ゴールについて研究者と合意する。面談中には研究構想を丁寧に聴き、問いかけやフィードバックによって研究者自身の考えや意欲を引き出す。そして面談後には、必要な情報提供やフォローアップを行う、といった内容です。

いわば、**URA自身の手によって作られた「研究面談の虎の巻/実践ガイド」**です。

研修で学んだことを個人のスキルとして終わらせず、経験豊富なURAが持つノウハウも含めて、組織全体で共有・活用できる「組織の知」として形にしたことも、本プログラムの大きな成果の一つとなりました。

KURAの研究面談にコーチングをどう活かすか

プログラムで大切にしたのは、「URAがプロコーチになること」ではありません

URAには、研究環境や研究費、大学の制度などに関する専門性があり、研究者に対して情報や選択肢を提供したり、必要な支援につないだりする重要な役割があります。

一方で、研究者自身が何を目指し、何に困り、どのような研究を実現したいと考えているのかを理解する場面では、コーチング的な関わりが有効なことがあります。

そこで、一般的なコーチングの対話モデルをそのまま研究面談に当てはめるのではなく、

KURAのURAが持つ研究支援の専門性・経験知 × コーチング

という考え方を大切にしました。

「教える・伝える・提案する」ことと、「聴く・問いかける・一緒に考える」こと。

どちらか一方ではなく、研究者の状況や面談の目的に応じて、さまざまな関わり方を選択できることを目指しました。

参加者の声

研修では、実際の研究面談を振り返りながらコーチングの考え方を学ぶことで、さまざまな気づきが生まれました。

「面談中は沈黙を避けてしまいがちだが、研究者の先生が熟考する“良い沈黙”もあるということに気づきました。」

「研究者から話を引き出すところが重要だと感じた。今までのやり方がコーチング理論に裏付けられていることがわかり、自信を持って取り組める。」

「自分の意見は一旦置いておいて、まずは受け止めることを意識しようと思いました。」

「コーチングの対話モデルをうまく取り入れると、普段以上に面談がスムーズに行くことを実感した。」

「1on1コーチングの体験シェアで、クライアント側からの『気づき』の経験を聞き、コーチングがいかに有意義か知った。」

KURA研究面談モデルについても、

「面談の適切な準備や進め方を確認することができたため、今後の面談に活用することができそうだ。」

といった声が寄せられています。

研究支援の専門性に「対話」という選択肢を

URAには、研究者の状況を理解し、必要な情報やリソースを提供する専門家としての役割があります。

そこにコーチングの考え方やスキルが加わることで、

「教える・伝える・提案する」だけでなく、「聴く・問いかける・一緒に考える」

という支援の選択肢を増やすことができます。

さらに本プログラムでは、個人がコーチングスキルを身につけるだけでなく、URA自身がこれまで培ってきた研究面談の経験知を言語化し、「研究面談コーチングKURAモデル」という共通の実践ガイドとして組織に残すところまで取り組みました。

研修 → 現場での実践 → 振り返り → 暗黙知の言語化 → KURA独自モデルの作成

という一連のプロセスを通じて、URA個人のスキルアップと、組織としての研究支援力向上の双方を目指した事例です。

実施概要

対象:京都大学 総合研究推進本部(KURA)URA職 約30名
期間:約1年
形式:集合研修+1on1コーチング
プログラム:研究面談コーチング研修 全4回、プロコーチによる1on1コーチング
主なテーマ:コーチングの基礎、信頼関係の構築、傾聴・質問、ティーチングとコーチングの使い分け、コーチングの対話モデル、研究面談への応用、実践と振り返り
成果:研究面談コーチングKURAモデルの開発・ブラッシュアップ、研究面談の実践知・ノウハウの共有